ジュエリーの歴史
ジュエリーの歴史は大変古く、中国では石や動物の牙、貝などを加工した約10万年前のペンダントが発掘されています。しかし「ジュエリー=宝石(天然石)が貴金属地金にセットされたもの、あるいは貴金属地金のみの完成品」という現在の一般的なジュエリーの定義から見て最も古いものといえば、紀元前3000年頃以降の、古代エジプト、メソポタミアで生まれたものでしょう。この時代には、ラピスラズリ、トルコ石、めのうと言った天然石を研磨し、加工した金を組み合わせてネックレス、ペンダント、イヤリング、指輪などに仕立てた、現代に近い形のジュエリーが登場しました。
日本では、縄文時代荷石や粘土を使った耳飾り、腕輪、櫛が生まれ、ジュエリーとしては、朝鮮との交易が盛んになってきた古墳時代に、真珠や翡翠、水晶、めのう、琥珀などを使った勾玉(糸を通して首飾り、腕輪、アンクレットとして使われていた)が作られるようになり、それらが古墳から数多く出土しています。しかし不思議なことに、飛鳥・奈良時代以降、櫛やかんざしなどを除き日本の歴史においてジュエリーが登場することはほとんどなくなります。その原因としては、衣服の染色技術が発達して不要になったなどの説がありますが、何はともあれ、再び普及するようになったのは、明治時代になってからのことです。
そもそもジュエリーや、その前身とも言える「装身具」が生まれた背景には、人間たちの自然に対する恐れがありました。つまりジュエリーは、猛獣や疫病、大自然の猛威など、生活を脅かすものに対する魔除け、お守りの意味を持つものだったのです。それが時代の変化とともに、徐々に富のシンボルへとその意味を変えていきます。
日本でも明治、大正時代は、あくまで支配階級の富のシンボルとして使われていたにすぎません。庶民が日常的に身につけるようになったのは、昭和40年代以降です。そういう意味で、日本における庶民のジュエリーの歴史は始まったばかりと言っても過言ではないでしょう。
現代社会において、ジュエリーは決して生活になくてはならないものではありません。にもかかわらず、今や女性にとっては非常に身近な存在です。誕生日、結婚式、クリスマスなど、様々な行事での贈り物として、また自分の個性をアピールするファッションアイテムとして、日常的に登場します。特に、最近は価格が手頃になったことで、誰もが気軽に買えるようになり、日本女性のジュエリー所有数はかなりのものになっています。
驚くべきことに、日本は歴史が浅いにもかかわらず、世界的に見てもジュエリーの消費大国として知られています。日本でのダイヤモンドの需要は、世界の総需要量526億ドル(1995年)に対して32%と、アメリカと並んで第1位(ヨーロッパ7%、その他8%)という数字が、それを裏付けています。
ジュエリーに興味を抱けば、それに関わる仕事がしたいというのは当然のことでしょう。ここ数年、女性が憧れる職業の1つとしてジュエリーデザイナーが上がることが多くなっているのも事実です。
しかしジュエリーに関わる仕事というのは、デザイナーばかりではありません。デザイナーが描いたデザイン画を元にメイキングをする製作者、石や完成品のジュエリーを買い付けるバイヤー、グレーディング・レポートを作成するグレーダー、鑑別書を作成する鑑別者、市場の動向を睨みながら売れ筋の商品を考える商品企画者、商品を小売店に売り込む営業担当者、そして小売店などで直接消費者と接する販売担当者など、ジュエリーが実際に消費者の手に渡るまでには、実に多くの人が関わっています。
バブル崩壊後のジュエリー業界は、数字から見れば明るいというわけではありません。
けれども、依然として、ジュエリーが「憧れ」「夢」といった、人間のロマンの産物であることに変わりはありません。ひとつのジュエリーがどれだけの人々を幸せにしてきたか。そう考えれば、人間を幸せにできるジュエリーに関わる仕事が出来るというのは、とてもすばらしいことではないでしょうか。
1997年秋より、(社)日本ジュエリー教会の下「ジュエリーコーディネーター資格」が発足しました。ジュエリーの普及にともなって、最近では実にさまざまな宝石素材が見られるようになり、技術的にも、デザイン・製造加工の面でも多様化が進んでいます。消費者にとっては選択の幅が増えたわけですが、同時にそれに関わる人々にとっては、身につけなければいけない知識が増えたということでもあります。その状況を受けて登場した「ジュエリーコーディネーター」は、ジュエリーの正しい情報や知識、豊富な経験をもとに、消費者がジュエリーについて正しい商品選択ができるように必要な情報を提供し、その魅力、つける楽しさなどを的確に伝える役割を担っています。
ジュエリーコーディネーターに関わらず、ジュエリー業界は、ある意味で「職人」的気質を持った世界であり、スペシャリストとしての知識と経験が必要とされます。しかしそれゆえに、一度身につけてしまえば、日本に限らず、世界を舞台に飛び回ることも決して夢ではないのです。
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