輸出契約書を取り交わす

契約書(注文書、注文請書を含む)の表面には、タイプ条項と呼ばれる条項、すなわち、商品、数量、船積み、金額、保険、支払い条件、荷印などが記載されます。それぞれ、合意内容をタイプライターで打ち込みます。また、裏面には一般取引条件が印刷されています。このため、一般取引条件は印刷条項といわれています。
これらの契約書は、二通作成し、当事者がそれぞれ署名をして一通ずつ所有します。
なお、署名の際は内容を一つ一つチェックし、取決めと異なった内容があるときには、相手方荷申し入れて訂正することが必要となります。

<b><span style=”color:rgb(255,0,0);”>契約書の主な記載事項</span></b>
それでは、タイプ条項のうち、重要なものについて説明していきましょう。

<b>▼品名(Commodity)</b>
商品名は、明確に記載します。
契約書に書かれた品名は、送り状や輸出通関の際荷提出する申告書に転記されるので、輸出統計品目表の区分が明らかになるように記載します。
<b>▼品質(Quality)</b>
品質については、次の2つの点に注意しなければなりません。
・品質条件そのものの取決め
・何時の時点で、品質条件がクリアーされていなければならないのかの取決め
この二つについて簡単に説明しましょう。

<b>〈品質条件そのものの取決め〉</b>
ボールペンやホチキスなどのような軽工業品については、見本の品質を確かめた後に発注するというやり方が行われており、これを見本売買(Sale by Sample)と呼んでいます。
もし、見本の品質ではよくないという場合には、その見本を改良した逆見本(Counter Sample〉を相手方に送ります。この方法をとれば、実際に手にとって品質を見ることができます。しかし、船舶、航空機、機械設備など、大きな貨物になると、見本売買は困難になります。
このような貨物は、通常、買主の引合いに応じて、買主が、図面、青写真などの仕様書を作成して売主に示し、これをベースに品質条件が決定されます。このような方法を仕入書売買〈Sale by Specification
〉と呼んでいます。
また、ブランドものであれば、その銘柄〈Brand〉、商標〈Trade Mark〉が指定されます。これによって品質が決められます。これを、銘柄売買〈Sale by Brand〉と呼びます。
さらに、農水産物品、木材などの天然産物については、あらかじめ標準品を設定しておき、この標準品を基準にして売買がなされます。標準品より品質が良い場合はプレミアムをつけ、品質が劣っている場合にはディスカウントします。これを、標準品売買〈Sale by Standard〉といいます。

<b>〈いつの時点での品質条件を取り決めるのか〉</b>
基本的に二つのやり方があります。
一つは、「船積み時の品質条件(Shipped Quality Terms)」とする方法、もう一つは、「陸揚げ時の品質条件(Landed Quality Terms)」です。
たとえば、貿易条件がFOB条件、CIF条件、あるいはC&F条件の場合、輸出者(売主)の危険負担は、輸出港に停泊している船(本船)に積み込むと輸入者(買主)に移転します。つまり、輸出港において、積み込まれたあと、沈没、座礁、高波などによって、商品に変質や損傷が起きたとした場合でも輸出者には責任がないのです。
このようなことから、通常、これらの貿易条件の場合は、船積み時の品質条件とすると考えてよいでしょう。もし陸揚げ時の品質条件とするときは、特約を結ぶことを意味します。いずれにせよ、後日のトラブルを防ぐため、きちんと協定を結ぶべきです。
ところで、船積み時の品質条件の場合、本当に船積み時の品質が条件通りのものであったかを輸入者(売主)に対して証明する必要があります。
この証明は、第三者機関でかつ権威のある機関が行う必要があります。
現在、日本には、次のような検査機関があります。
日本海事検定協会 (03-3552-1241)
インテコ International Inspection Co., Ltd (03-5245-0641)
日本検査(株) Japan Inspection Co., Ltd (03-5627-2351)
ロイド Lloyd’s Registers of Shippping (045-662-5941)
ベリタス Bureau Veritas (045-641-4217)
これらの機関では、検査をすると検査証明書(Inspection Certificate)を交付してくれます。この検査証明書は、輸出者が振り出す輸出手形の買取依頼の際などにも必要な書類になります。
ところで、輸入者の工場持ち込み渡しのように貿易取引条件が揚げ地渡しになっている場合には、陸揚げ時の品質条件となります。
この場合、輸入港において品質検査を行なって条件通りかどうかを確かめます。もし条件違反の場合は、検査機関の交付する鑑定報告書(Survey Report)に基づき、輸入者はクレームをつけることができます。

<b>▼数量(Quantity)</b>
数量の単位(Unit)は、重量、容積、面積、個数、包装単位、長さによって取引されます。
数量の具体的な表し方を示しておきましょう。
〈重量(WEIGHT)〉
ポンド〈lb, Pound〉、キログラム〈kg,Kilograms)、トン(Tons)などで取引をします。
なお、われわれが、一般的にトンといえば1000キログラムのことを示しますが(これを仏トンあるいは、メートル・トン(Metric Tons)といいます)、このほか二つのトンがあるので、どのトンを使用するのかをはっきりと表示しておくことが必要です。
・英トン (English Tons, Long Tons) ・・・・・・1トンは約1016キログラムを示します。これは2240ポンドです。
・米トン (America Tons, Short Tons) ・・・・・・1トンは約907キログラムを示します。これは2000ポンドです。
・仏トン 〈Metric Tons, Kilo Tons〉 ・・・・・・1トンは1000キログラムを示します。これは2204ポンドです。
〈容積(Measurement)〉
立方メートル〈Cubic Metres〉 ―木材について使用されます。
バーレル(Barrel) ―石油などについて使用されます。
〈面積(Square)〉
平方メートル(Square Metres) ―綿織物などについて使用されます。
〈個数(Piece)〉
ダース(Dozen) ―ボールペン、万年筆などについて使用されます。
個、台(Raw Number) ―電気機器、乗用自動車などについて使用されます。
グロス(Gross) ―天然真珠などに使用されます。
〈包装単位〉
箱〈Case)、カートン(Carton) ―輸出の際の商品の包装単位です。いくつのケースに分けられて輸出されるかが示されます。
〈長さ〉
メートル(Metre)、ヤード(Yard)、フィート(Feet)
以上が、数量の具体的な表し方ですが、輸出の際、税関に提出する申告書には、大蔵大臣が貨物の種類ごとに定める単位によって、輸出貨物の正味の数量を記載することになっています。

<b>〈1回の注文量の条件〉</b>
輸出入においては、一回の注文量の最低数量や最大数量を定めておくことがあります。これは、コスト割れを防ぐため、あるいは製造能力との関係などによって決められます。
最小引受け可能量のことをMinimum Quantity Acceptableといい、最大引き受け可能量のことをMaximum Quantity Acceptableといっています。
通常、これは価格表(Price List)に表示されています。

<b>〈数量は、いつの時点のものを示しているのか〉</b>
品質の場合と同じように、船積み時の数量か、あるいは陸揚げ時の数量かを示しておくことは、のちのちのトラブル防止のために必要です。
通常、CIF契約、FOB契約、C&F契約など積み地契約の場合は、船積み時の数量を示し、輸入者の工場持込渡しなどのように揚げ地契約の場合は、陸揚げ地の数量条件と考えられます。この条件は、輸入者〈買手〉にとって有利な条件ともいえます。いずれにせよ、CIF契約にもかかわらず陸揚げ数量条件とすることもありますから、どちらの条件であるかを明確にしておくべきです。
船積み重量条件のことをShipped Weight Finalといい、陸揚げ重量条件のことをLanded Weight Finalといいます。
船積み重量条件の場合、貨物を保税地域に搬入したあとに契約通りの数量を船積みしたことを証するために、検量業者(Sworn Measurer)に検量を行なってもらいます。
この検査結果は、船荷証券に記載される容積、重量になります。また、海上運賃の計算基礎にもなります。そして、荷主に対し、容量・重量証明書(Certificate and List of Measurement and/ or Weight)が交付されます。この交付された証明書は、輸出手形の買取依頼のときに重要な書類になります。

<b>〈過不足容認条件〉</b>
原料、穀物などでばら積みされる貨物〈いわゆるばら荷:Bulk Cargo〉の場合、運送中に欠減が生じるのは避けられません。
この場合、陸揚げ数量制限である場合は、過不足容認条件(More or Less Terms)をあらかじめ取り決めておきます。
たとえば、”Sellers have the option of shipping 8% more or less on the contracted quantity”と取り決めておけば、契約数量の過不足が八パーセントの範囲で陸揚げされればよいということになります。
この英文では、売り手がmore or lessのいずれかを選択するとされています。
このように、売手が決定するという取り決めが一般的です。
なお、「荷為替信用状に関する統一規則」によると、過不足容認条件が契約に定められていない場合でも、五パーセントまでの過不足は容認されています。(同規則43条)。

〈重量の測定条件〉
契約上で示された数量がグロスの重量なのか、あるいはネットの重量なのかを区別しておかなければなりません。
つまり、梱包された貨物の場合、その容器を含めた重量なのか、または容器を除いた重量なのかを取り決めることが必要なのです。前者を総重量(Gross Weight Terms)、後者を純重量(Net Weight Terms〉といいます。
契約書上の価格設定においては、次の点について明らかにしておかなければなりません。
・建て値(値段の建て方:Price Construction)
・コストの範囲(Cost Coverage)
・通貨の種類(Currency)
これらは、次のような表示で明らかになります。
CIF NEW YORK  US$5,000
FOB YOKOHAMA  US$4,500
この場合、CIF(運賃・保険料込み価格)およびFOB(本船積込渡し)というのが建て値です。
また、NEW YORKやYOKOHAMAという表示がコストの範囲を示します。そしてUS$5,000とかUS$4,500が通貨の種類を表します。
これらは、あとで詳しく述べますが、通常、国際商業会議所(ICC)で制定した価格の建て方の統一規則(インコタームズ)に基づいて契約します。

<b>▼決済の方法</b>
外国との取引における決済条件は、次のようなものが考えられます。
①信用状を利用し、決済する条件
②信用状なしで荷為替手形によって決済する条件
③送金によって決済する条件
④送金小切手によって決済する条件
なお、輸出決済で一定の方法によるものは特殊決済となり、外為法によって輸出承認が必要となる場合があるので、注意しなければなりません。
これらについては、

<b>▼保険(Insurance)</b>
輸出は、日本から諸外国に向けて、船舶あるいは航空機によって輸送されるわけですが、この輸送中に発生する偶然の事故による損害を補償しようというのが、外交貨物海上保険です。
通常、次の五つの点について取り決めます。
①保険期間 (Duration of Coverage)
②保険契約者 (Applicant)
③保険のてん補範囲 (Conditions of Insurance)
④保険金額 (Insured Amount) ―これは、てん補の最高金額を意味します。
⑤被保険者 (Assured) ―被保険者は、保険契約に基づいて損害のてん補を受ける立場の者のことを意味します。

<b>▼船積み(Shipment)</b>
まず、船積みの時期について取り決めます。取り決めの方法は、およそ次の四つが考えられます。
①特定日指定方式
特定した日に船積みをすると取り決める方法
②特定月指定方式(単月積み)
特定した月を指定し、その月十二船積みをすると取り決める方法
③連月指定方式(連月積み)
たとえば、八月から九月までの間に船積みを行うことを取り決める方法
④日数指定方式
たとえば、信用状受領後の二〇日以内に船積みを行うというような取り決めをする方法
さらに、「直行(Direct Shipment)」で輸送するのか、または「積替え(Transshipment)」によって輸送するのかという輸送経路を決めておきます。
そして、輸出貨物の積出し方法を決めます。一括して積み出すのか、あるいは、必要な貨物のみを積み出し、あとは必要に応じてか、または一定期間ごとに積み出すのかを取り決めます。前者を一括積み出しといい、後者を分割積み出しといいます。

<b>▼その他</b>
このほか、荷印(Marking)、仕向港(Port of Destination)などについても取り決めておきます。

 

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ